セッション基本情報

「このボタン、何色に見えますか?」

そんな問いかけでセッションを始めたのは、株式会社IMAKEのデザイナー・エダマツさんです。

 Webや紙、動画など幅広いジャンルのデザインに携わり、現在はディレクション業務も担当。今回は、自身の実体験をもとに“色の見え方”に関する気づきを紹介しました。

ある日、エダマツさんは70代男性のクライアントとLP制作の打ち合わせをしていました。デザイン提案の中で、オレンジのボタンを「強調色として視認性も高く、テクノロジー系の商材に適している」と説明したところ、返ってきたのは「黄色のボタンはイマイチかな」という意外な反応。

エダマツさんが「オレンジ」と説明していたにもかかわらず、クライアントはそれを「黄色」と受け取っていたのです。

さらに、「背景は青のままで、赤いボタンに黒文字ではどうか」との提案も。 これに対してエダマツさんは、「青と赤の明度が近いためハレーション(チカチカして見える現象)を起こしやすい」「黒文字では全体が重くなりすぎる」といった違和感を覚えたと語ります。

そこで周囲の先輩に相談したところ、「性別や年齢によって色の見え方は異なる」という指摘を受け、自らも調べてみたそうです。

ある研究によれば、女性が29色を区別できるのに対し、男性はわずか7色ほどしか認識できないという結果が出ました。オレンジは男性には赤みが強く、芝生の緑も男性には黄緑、女性には青緑に近く見える傾向があるといいます。

さらに年齢による違いも無視できません。高齢になると視覚の感度が低下し、80代では「茶色のサングラスをかけたような視界」になることもあるんだとか。

こうした違いを理解せずに「自分の見え方こそが正しい」と思い込むのは危険――エダマツさんはそのやり取りの中で、強くそう感じたといいます。

最終的に、クライアントの要望に応じた「赤」と「黄色」のボタン案を用意し、「黄色」で決着。安堵するとともに、「色の感じ方は人によって異なるもの。自分の視点だけでデザインを決めつけないことの大切さ」を改めて学んだと振り返ります。

ターゲットや状況に応じて柔軟に配色を調整しつつ、根拠のある説明でクライアントとの認識をすり合わせていく。その丁寧な姿勢が、信頼関係を築くうえでも重要だと気づかされるセッションとなりました。

管理人

色の感じ方に性別差があるとはなんとなく思っていたものの、今回の話を聞いて、想像以上に“見え方”に違いがあることに驚かされました。

最近では「ユニバーサルデザイン」という言葉をよく耳にしますが、まさにこうした感覚の違いを前提に、誰もが同じように情報や価値を享受できるようにすることが目的なのだと、改めてその意義を実感しました。

見た目だけでなく見え方への配慮こそが、デザインの本質なのかもしれませんね。