セッション基本情報

急遽登壇が決まり、短時間で資料をまとめたという庄司美雪さんは、インフラエンジニア、Web広告代理店、フロントエンド開発を経て、現在はWebクリエイター・UI担当として活動しています。本セッションでは、CMS(コンテンツマネジメントシステム)の現状とこれからについて語りました。

 今、WordPress界隈ではプラグイン「Advanced Custom Fields(ACF)」を巡る企業間の訴訟問題が泥沼化しており(※)、ユーザーへの影響も深刻です。プラグインの自動更新が停止されたことで、複数サイトを運営する担当者には大きな負担が発生。また、ACFの開発体制が変わったことによる機能不安や、プラグイン開発者離れによるセキュリティリスクの高まりも懸念されています。

(※)参考:Court orders Automattic to restore WP Engine’s access to WordPress.org|TechCrunch

こうした状況を踏まえ、庄司さんは「ヘッドレスCMS」という選択肢を提案

従来のWordPressのようにデータベースとフロントエンドが一体化しているのではなく、ヘッドレスCMSは「データ管理」と「サイト表示」を分離できるため、部分的にコンテンツを埋め込む運用が可能になります。API経由でデータを取り出せるため、柔軟な開発や複数サイトへの展開も容易になるのがメリットです。

日本国内で有名なヘッドレスCMSとしては、microCMSやNewtがあり、海外製ではContentfulが先駆者的存在。ただし、ヘッドレスCMSを導入するにはReactやNext.jsといったモダンなフロントエンド技術が必要になるため、「WordPress慣れ」している層には敷居が高く感じられる問題も指摘されました。

※なお、Newtは2026年11月24日をもってサービス終了予定であることが発表されています。参考:公式サイト

そこで庄司さんは、技術的なハードルを下げる工夫として、次の3つの構成例を紹介しました。

構成パターンメリットデメリット
microCMS × jQuery馴染みがあり、環境構築が不要HTMLやCSSの延長感覚で扱えるコーダーにも親しみやすいページ表示後にデータ取得のため、表示に1〜2秒のラグが生じる大規模サイトにはやや不向き
microCMS × Astro.jsHTML感覚で記述できるため敷居が低い表示が非常に高速(プリレンダリング対応)モダンな技術にも適応できるNode.js環境の構築が必要チーム開発ではNodeバージョン管理が課題
microCMS × ViteシンプルなHTML感覚でサイト構築が可能表示が高速で軽量デプロイ後も静的ファイルなので管理しやすいNode.jsベースの開発環境が必要バージョン管理やビルド工程に多少の知識が必要

結局のところ、どのヘッドレスCMSを使うかは「何を重視するか」によって変わり、多少の学習コストは避けられないものの、WordPressを導入したときの苦労と本質的には変わらない――そう庄司さんは語りました。

まとめとして、「WordPressはすぐに使えなくなるわけではないが、中長期的にはセキュリティリスクが無視できない」と警鐘を鳴らしつつ、「ヘッドレスCMSを視野に入れ、柔軟な技術選択ができる体制づくりが必要だ」として、セッションを締めくくりました。

管理人

WordPressを巡る訴訟問題については、実はこれまで詳しく知らなかったのですが、今回のお話を聞いて、改めて今後の動向をしっかり見守る必要があると実感しました。私自身PHPエンジニアとして仕事に携わっているため、こうした変化は直接影響してくる可能性があるからです。

またヘッドレスCMSについては、以前デジタル庁のサイト事例を調べた際に少しだけ勉強したものの、これから本格的に注目される技術領域でもあり、しっかりキャッチアップしていかなければいけないと改めて認識しました。